不動産売却時に問われる契約不適合責任とは?買主の権利や対策を解説
- この記事のハイライト
- ●契約不適合責任とは引き渡した物件が契約内容と一致しない場合に、売主が買主に対して負う責任のこと
- ●契約不適合責任における買主の権利は、追完請求・代金減額請求・契約解除・損害賠償の4つ
- ●責任を回避するための対策としてインスペクションの実施がおすすめ
不動産を売却する際、売主は契約不適合責任に注意が必要です。
本記事では、契約不適合責任とはなにか、契約不適合責任における買主の権利や対策方法の1つであるインスペクションについて解説します。
不動産を売却する予定の方は、ぜひ参考になさってください。
不動産売却時に問われる契約不適合責任とは?

不動産売却において、契約不適合責任とは、売主が買主に引き渡す不動産が契約内容に適合しない場合に生じる売主の責任を指します。
2020年4月の民法改正により、従来の瑕疵担保責任に代わって導入されました。
契約不適合責任が問われる場面
契約不適合責任が問われるのは、売却する不動産が契約内容と異なる場合です。
たとえば、古い物件でよくある雨漏りの問題を考えてみましょう。
売買契約書に「雨漏りがある」と明記されており、それを買主が承知している場合、売主はその点について責任を問われません。
しかし、契約書に何も記載がない場合、契約不適合と見なされ売主が責任を負うことになります。
買主から修理を依頼された場合は、売主が費用を負担し、修理業者を手配する必要があります。
契約不適合責任を避けるためには、物件の状態を正確に把握し、契約書にその詳細を記載することが重要です。
瑕疵担保責任との違いとは
民法が改正される前の瑕疵担保責任は、売主が物件の隠れた瑕疵(見えない不具合)に対して責任を持つ制度でした。
「隠れた瑕疵」とは、売買契約時に気付かなかった問題、たとえば雨漏り、シロアリの被害、土壌の汚染など、外見だけでは判断が難しいものを指します。
しかし、2020年の民法改正により導入された「契約不適合責任」では、瑕疵が隠れているかどうかではなく、物件が契約書の内容に合致しているかどうかが重要視されるようになりました。
なお、契約不適合責任を追及するには期間に制限があります。
民法では、買主は契約不適合を知ったときから原則として1年以内にその事実を売主に通知しなければなりません。
この期間内に通知をおこなうと、買主は売主に対して責任の追及が可能となります。
不動産売却で契約不適合責任が発生した際の買主の権利

契約不適合責任が発生すると、買主は売主に対して権利を行使することができます。
買主の権利は、以下の4つです。
①追完請求
追完請求とは、購入した不動産が契約通りの状態になるよう、修理などの対応を売主に求めることを指します。
たとえば、契約書には明記されていなかった雨漏りが発覚した場合、買主はその修繕を売主に要求することができます。
このとき、修理にかかる費用は売主負担です。
②代金減額請求
代金減額請求とは、購入した不動産の代金を減額してもらうことを請求する権利です。
代金減額請求は、通常、売主が追完請求(修繕要求)に対応しなかった場合やできない場合におこなわれます。
たとえば、売買した土地が契約書に記載された面積よりも小さい場合、追完請求はできないため、買主は代金減額請求をすることになります。
つまり、代金減額請求は、不動産の状態が契約内容に適合しないとき、そして売主がその問題を解決できない場合に、買主が利用できる権利です。
③契約解除(催告解除・無催告解除)
催告解除は、売主が追完請求(修繕要求)に応じない場合に、買主が通告した後に契約を解除する権利です。
一般的には、売主が追完請求に対応しないとき、買主は代金の減額を請求する道を選びますが、住宅の購入のような場合には、単なる代金減額では解決が難しい状況もあります。
たとえば、購入した建物に重大な欠陥が発見され、そのままでは住むことが不可能で、修理にも多額の費用が必要になる場合がそれに該当します。
その場合、買主は催告解除の権利を行使して、契約を解除し、取引を元に戻すことができるのです。
一方、無催告解除とは、買主が事前の催告(通告)なしに直接契約を解除する権利です。
これは、売主の履行が期待できない状況、つまり契約の目的が達成不可能と判断される場合に認められます。
たとえば、物件に重大な問題があり、それが修正不可能であることが明らかな場合などが該当します。
④損害賠償請求
損害賠償請求とは、相手方の行為によって生じた損害を金銭で補償してもらうことを求める権利です。
物件が契約内容に合致しない場合で、その原因が売主に責任があると認められるならば、買主は売主に対して損害賠償を請求することができます。
契約不適合責任に基づく損害賠償には「信頼利益」と「履行利益」の2種類があります。
信頼利益は、契約が有効だと信じておこなった行動によって発生した損害です。
たとえば、不動産の売却に際して支払った仲介手数料や登記費用などが挙げられます。
一方、履行利益は、契約が正常に履行されていれば得られたはずの利益を失ったことによる損害です。
たとえば、物件を転売して得られる利益や、賃貸に出していた場合の賃料収入の損失が該当します。
売主が意図的に情報を隠していたり、過失がある場合には、これらの損害賠償を請求することが可能です。
不動産売却の契約不適合責任の対策となるインスペクションとは?

売却予定の物件に不具合や欠陥がある場合、売主はその事実を買主に完全に告知する義務があります。
告知義務を怠ると、契約不適合責任を問われる可能性があります。
契約不適合責任の問題を避けるためには、契約書に物件の状態を具体的に記載することが重要です。
その対策としておすすめなのが、インスペクション(住宅診断)の実施です。
インスペクションとは
インスペクションとは、建築の専門家による建物の詳細な調査のことです。
インスペクションをおこなうと、物件の劣化状況や欠陥、改修が必要な箇所やその時期が明らかになります。
一戸建ての場合、費用はおよそ5万円から12万円、マンションの場合は4万円から6万円が相場です。
より詳細な調査を希望する場合は追加料金が発生します。
インスペクションの説明義務
2018年4月の「改正宅地建物取引業法」施行以来、不動産売買においてインスペクション(建物診断)の説明が法的に義務付けられました。
この法改正により、不動産会社は以下のような場面でインスペクションに関する説明をおこないます。
- ●媒介契約締結時:売買を仲介する契約を結ぶ際にインスペクションの必要性やその利点について説明
- ●重要事項説明時:不動産の購入に関連する重要な事項を説明する際にインスペクションの情報も含める
- ●売買契約締結時:インスペクションが実施されている場合、結果の概要を説明する
この義務化により、不動産取引の透明性が高まり、買主と売主双方が物件の状態をより正確に理解し、納得のいく取引が進めやすくなりました。
インスペクションのメリット
インスペクションを実施することは、契約不適合責任のリスクを減らす効果があります。
不動産を売却する前にインスペクションをおこなうと、建物の不具合や状態をしっかり把握し、これらの情報を買主に説明し、売買契約書に明記することができます。
費用はかかりますが、将来的なトラブルを未然に防ぐことができるのです。
さらに、インスペクション済みの物件は他の物件との差別化が図れるため、売却がスムーズに進むというメリットもあります。
まとめ
契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約内容と一致しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
契約不適合責任における買主の権利は、追完請求・代金減額請求・契約解除・損害賠償の4つです。
責任を回避するための対策として、インスペクションの実施をおすすめします。
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