相続対策のひとつ「遺贈」とは?種類や相続との違いについて解説

相続対策のひとつ「遺贈」とは?種類や相続との違いについて解説

被相続人が生前にできる相続対策のひとつが「遺贈」です。
遺贈をおこなえば、養子縁組以外の方法で第三者に遺産を相続してもらえますが、税制上のデメリットなどには注意が必要です。
そこで今回は遺贈とはなにか、遺贈の種類や相続との違いについて解説します。

相続対策のひとつである「遺贈」とはなにか

相続対策のひとつである「遺贈」とはなにか

はじめに遺贈に関する基礎知識として、遺贈の概要と実施の流れ、メリット・デメリットを解説します。

遺贈の概要

遺贈とは、遺言書により遺産を第三者に相続してもらうことを指します。
遺産を受け取る第三者のことは「受遺者」と呼びます。
法定相続人以外に相続してもらいたい状況が生じる例は、以下のとおりです。

●婚姻関係にない内縁の夫
●日常的にお世話を受けているヘルパーさん
●NPO法人などの団体
●お世話になった友人


とくに配偶者や子どもがいない方の場合は、血縁関係にこだわらない遺贈の形を希望するケースがあります。

遺贈の流れ

遺贈の流れは被相続人の生前と死後に分かれます。
生前には、遺言書を作成する必要があります。
遺贈で一般的に作成する遺言書の種類は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。
自筆証書遺言には法務局での遺言書保管制度があり、他者による隠匿や偽造・変造のリスクを防止できます。
公証人役場で作成する公正証書遺言は、より法的効力の高い遺言書です。
どちらの遺言書を作成する場合も、相続開始後の手続きを進める遺言執行人を定めておくことがおすすめです。
被相続人の死後は、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きをおこないます。
遺言書の内容に応じて相続人もしくは遺言執行者により必要書類を集め、相続の名義変更手続きをすれば、相続が完了します。

遺贈のメリット

遺贈のメリットは、法定相続人以外の第三者に遺産を相続させたい場合、生前は秘密裏にしておける点です。
第三者と養子縁組を組む場合、家族や親族に知られて揉め事が生じる可能性があります。
一方、自筆証書遺言や秘密証書遺言の形で遺言書を遺せば、相続が開始するまで遺贈の意向を秘密にしておけます。
遺贈は個人だけではなく法人も受遺者として選べる点もメリットです。
法定相続人間の相続争いを避けたい場合、第三者の法人に相続してもらうことを選択するのもひとつの手です。

遺贈のデメリット

遺贈は、相続争いを避ける選択肢になるケースと、かえってトラブルの種となるケースがあります。
家族や親族が受遺者の存在を知らされていなかった場合、相続開始時に突然知らされ、受遺者に悪感情を抱く可能性があります。
遺言書が法的効力を持つためには書き方にルールがあり、基準を満たしていないと遺言書が無効になるリスクがある点も遺贈のデメリットです。
さらに、遺贈にも相続税がかかるため、遺産の内容によっては受遺者に負担を与えてしまう可能性もデメリットといえます。

遺贈の種類

遺贈の種類

遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。
ここでは、それぞれの違いについて解説します。

包括遺贈とは

包括遺贈とは、遺産の内容を特定せずにすべてもしくは割合によって与える遺贈です。
たとえば、遺言書には「受遺者に対し資産の2分の1を与える」と記載します。
包括遺贈では遺産の内容の指定をしないため、受遺者は借金などのマイナスの資産を受け継ぐ可能性もあります。
包括遺贈を放棄したい場合は、相続の事実を知ってから3か月以内の手続きが必要です。
包括遺贈では受遺者は法定相続人と同様の権利や義務を持つため、相続放棄の場合と同様家庭裁判所に申述をおこない、放棄の手続きをする必要があります。

特定遺贈とは

特定遺贈とは、遺産のうち特定のものを指定する遺贈の形です。
たとえば「Aさんには現金、Bさんには不動産」などの形で指定して遺言書に記載します。
特定遺贈の場合、受遺者は遺言書による指定がない限り負の資産を引き継ぐことはありません。
特定遺贈を放棄する場合は、相続人か遺言執行者に対して内容証明による意思表示が必要です。
特定遺贈の放棄に期限はありませんが、意思表示がないと遺産分割ができないため、遺贈義務者や利害関係者は回答を催告する権利を要しています。
提示された期間内に回答しなければ、遺贈を承認したものとみなされます。
なお、遺贈では「停止条件付遺贈」「負担付遺贈」と呼ばれる条件付きの形も選択可能です。
たとえば停止条件付遺贈では「医師免許を取ったら」「結婚したら」などの条件で、特定の遺産を与える条件を決められます。
負担付遺贈は、相続の条件として一定の義務を課せます。
たとえば「不動産を遺贈する代わりに、被相続人の借金を弁済しなければいけない」などの条件の付与が可能です。

遺贈と相続との違い

遺贈と相続との違い

遺贈と相続は主に「財産を受け取る方」「税率」「不動産の登記」の面で違いがあります。
それぞれの違いの内容を解説します。

財産を受け取る方

遺言書がない一般的な相続では、民法により財産を受け取る方が指定されています。
相続権を有する方を「法定相続人」と呼びますが、法定相続人は主に配偶者および血族関係にある方です。
配偶者は常に相続権を持ち、血族相続人には子ども、直系尊属、兄弟姉妹の順に相続権の順位があります。
遺言書がない場合、第三者もしくは相続順位が下位にある親族に遺産を相続させることはできません。
一方、遺言書による遺贈を選択すれば、法定相続人以外の方に相続を与えられる点が大きな違いです。

税率

遺産を相続した場合は、相続税を納税する必要があります。
法定相続人が相続した財産の場合、相続税の基礎控除が活用できます。
基礎控除は法定相続人の数が多いほど控除率が高くなりますが、遺贈の受遺者はこの計算に含められません。
また、法定相続人以外の遺贈は「相続税額の2割加算」の対象となります。
遺贈は本来得る可能性が低かった財産を得る「偶然性の高さ」を理由に、税負担が重く設定されています。
法定相続人が相続する場合よりも負担が大きくなるため、被相続人は受遺者が受けるデメリットについてもよく検討したうえで遺贈を決めることが大切です。

不動産の登記

遺贈によって不動産を取得した場合は、相続の場合と手続きに違いが生じます。
相続で取得した不動産の登記は単独申請が可能です。
一方、遺贈で取得した場合は、受遺者に加え、相続人または遺言執行者との共同申請が必要となります。
相続人のうち遺贈に反対する方がいる場合、必要書類の取得に協力してもらえず手続きが進まない可能性があります。
相続の場合、登記が完了していなくても所有権の主張ができますが、遺贈の場合は登記が完了するまで所有権の主張ができません。
登記前に不動産が債権者により差し押さえられた場合、遺贈により取得した不動産を失う可能性も考えられます。
また、借地を取得するケースでは、借地権の扱いにも違いが生じます。
相続では、相続人は地主に借地権を相続した旨を通知するだけで済み、他の手続きは必要ありません。
一方、遺贈により借地を取得した場合は地主の承諾が求められ、承諾料を要求される可能性もあります。
承諾料の相場は地域慣習によって異なりますが、借地権価格の10%程度を求められることが一般的です。

まとめ

遺贈とは、遺言書により遺産を第三者に相続してもらうことです。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があり、遺贈の内容を割合で決めるか、財産を指定するか選択できます。
遺贈は第三者を受遺者として指定できること、税率が高いことなどが相続との違いです。